「とりあえずGoogleカレンダー(または、Outlook予定表)で管理しています」
ICT支援員のスケジュール管理ツールを聞くと、この答えが返ってくることは珍しくありません。組織内にすでに導入されていて、スマートフォンからも確認できて、共有も簡単。たしかに最初の一歩としては申し分ないツールです。
ところが、担当校が増え、支援員の人数が増え、学校側とのやりとりが複雑になってくると、Googleカレンダー(または、Outlook予定表)では追いきれない場面が少しずつ出てきます。
「なんとなく不便を感じつつも、他に選択肢が思い浮かばないから使い続けている」という方も多いのではないでしょうか。
この記事では、ICT支援員の現場でGoogleカレンダーが抱える具体的な限界を整理し、どういったタイミングで別の管理方法を検討すべきかを解説します。
カレンダーツールへの不満を言語化できていない方、あるいは部下・担当の支援員が「使いにくい」と感じているのを把握している管理者の方に、特に読んでいただきたい内容です。
まず認める ― Googleカレンダーが優れている点
批判だけでは不公平なので、まずGoogleカレンダー(または、Outlook予定表)の強みを整理します。ICT支援員の業務において、これらのカレンダーツールが有効に機能する場面は確かにあります。
- どこからでもアクセスできる ― PCでも、スマートフォンでも、タブレットでも、確認・編集できる
- 共有が簡単 ― カレンダーを共有するだけで、派遣会社の担当者・支援員間でリアルタイムに予定を確認できる
- 通知・リマインダーが使える ― 訪問前日・当日にアラートを設定でき、予定の見落としを防げる
- 追加コストがかかりにくい ― 学校や派遣会社の組織内にすでに導入されているケースが多く、新たなコスト負担が生じにくい
担当校が1〜2校で、支援員も1名のうちは、これで十分なケースもあります。
しかし、規模が少し大きくなったとたんに、これらの強みだけでは補えない壁にぶつかります。
ICT支援員の現場でGoogleカレンダーが抱える5つの限界
限界① 訪問コマ数の集計ができない
Googleカレンダー(または、Outlook予定表)は「予定を可視化するツール」であり、「集計するツール」ではありません。
「今学期、A小学校には何コマ訪問したか」「担当5校それぞれの訪問コマ数はどうなっているか」を知るためには、カレンダーを目で見ながら手作業でカウントするしかありません。
ICT支援員の管理において、訪問回数の均等化は契約上・品質上の重要課題です(詳しくは記事④:GIGAスクール ICT支援員 訪問回数 均等化をご参照ください)。しかし、カレンダー単体では訪問の「量」を把握する機能がありません。
四半期ごとに均等配分を設計しても、キャンセルや日程変更が積み重なった後の実績が自動で集計されないため、「今どれだけずれているか」がリアルタイムでわかりません。
限界② 訪問の偏りが一目で確認できない
訪問コマ数の集計ができないことと直結しますが、「どの学校への訪問が多く・少なくなっているか」という偏りの状況を、カレンダーのビューで直感的に把握するのは困難です。
学校ごとにカレンダーを色分けして使う方法もありますが、
- 月をまたいで俯瞰する「年間ビュー」は存在しない
- 色ごとの件数が自動集計されない
- 複数月分をまとめて比較するビューがない
といった制約があります。偏りを把握するためには、別途スプレッドシートを作成して手動で転記する運用が必要になり、「カレンダーで管理しているのに、結局Excel等のスプレッドシートも使う」という二重管理が生まれがちです。
限界③ 入替え・スワップの記録が残らない
学校側の都合によるキャンセル、後から指定される訪問依頼、支援員の体調不良による日程変更 ― ICT支援員の現場では「スワップ」と呼ばれる入替えが日常的に発生します。
Googleカレンダー(または、Outlook予定表)で予定を変更すると、変更前の情報は上書きされて消えます。「当初はB中学校を訪問する予定だったが、C小学校の緊急対応で入れ替わった」という経緯が記録に残らないため、後から振り返っても「なぜこの配分になったのか」がわかりません。
入替えの経緯が記録されないと、以下の問題が発生します。
- 均等配分からどれだけずれたかが追跡できない
- 補填すべき学校がどこかを把握できない
- 学校や派遣元から「なぜ来なかったのか」と問われたとき、説明が困難になる
限界④ 複数の支援員を管理するときに限界が来る
支援員が複数名いる派遣会社の場合、それぞれの支援員がGoogleカレンダー(または、Outlook予定表)を個別に管理していると、担当者が全員分の状況を横断して把握することが難しくなります。
カレンダーの共有機能を使えばある程度は解消できますが、
- 権限管理が煩雑(誰が誰のカレンダーを閲覧・編集できるかの設定が複雑になりやすい)
- 「全員の稼働状況を一覧で見る」ビューがない
- 支援員Aが担当するB小学校に、別の日程でも対応できる支援員がいるかどうか、すぐに確認できない
といった問題が出てきます。支援員が3名を超えるあたりから、カレンダーによる一元管理は現実的でなくなってきます。
限界⑤ 訪問実績の報告書作成に使えない
学校への報告、教育委員会への実績提出、社内の管理資料 ― ICT支援員の業務には、定期的な「訪問実績のまとめ」が必要です。しかし、カレンダーから実績データをエクスポートしようとすると、出力形式はそのままでは報告書として使えません。
結果として、
- カレンダーを見ながら手動でExcel等のスプレッドシートに転記する
- 転記したスプレッドシートから報告書を作成する
- カレンダー → スプレッドシート → 報告書、という三段階の作業が毎月発生する
という非効率な運用になりがちです。
「つぎはぎ運用」が生む新たな問題
カレンダーの限界に気づいた多くの担当者が取る対策は、Excel等のスプレッドシートをカレンダーの補完として組み合わせることです。たとえば、
- カレンダー(Googleカレンダーや Outlook予定表)で予定を管理しつつ、月末に手動で集計シートに転記する
- 訪問実績をExcel等のスプレッドシートで別途管理し、カレンダーとは別に更新する
- 入替えの記録はメモやチャットに残す
といった運用です。
この「つぎはぎ運用」には、見た目以上の大きなリスクがあります。情報が複数箇所に分散することで、どれが最新かわからなくなります。カレンダーを更新したがスプレッドシートには反映されていない、あるいはその逆、ということが頻繁に起きます。
また、更新作業自体が業務になります。本来は支援業務に集中すべき支援員や管理者が、データの転記・照合に時間を使うことになります。
つぎはぎ運用は問題の先送りであって、解決ではありません。
カレンダーを「補完」するアプローチの限界
では、カレンダーに連携できる外部ツールを使えばいいのでは? と考える方もいるかもしれません。ZapierやMakeなどの自動化ツールを使えば、カレンダーのイベントが更新されたときに自動でスプレッドシートに記録する、ということは技術的には可能です。
ただし、これにはいくつかの前提条件があります。
- 自動化ツールの設定・保守ができる担当者がいる
- 自動化の設定コスト(初期設定・トラブル対応)を負担できる
- カレンダーのイベント名や色分けを、ルール通りに統一して入力し続けられる
ICT支援員の派遣管理は、ITエンジニアが本業の組織が行うわけではありません。「技術的には可能」であっても、現場で継続的に運用できるかどうかは別の話です。
自動化が崩れたとき(担当者の異動・ツールのAPIの仕様変更など)の影響が大きく、かえってリスクになるケースもあります。
専用ツールへの移行を考えるタイミング
Googleカレンダー(または、Outlook予定表)からの移行を検討すべきタイミングは、以下のいずれかに当てはまったときです。
| チェック項目 | 該当すれば検討のサイン |
|---|---|
| 担当校が支援員1人あたり3校以上 | 訪問コマ数の管理が手作業で限界になりやすい |
| 支援員が2名以上いる | 横断管理・稼働調整にカレンダーが機能しにくい |
| 月次・四半期の実績集計に30分以上かかる | 手作業の工数が無視できないレベルになっている |
| 訪問の入替えが月3回以上発生する | スワップの記録・補填管理がカレンダーでは追えない |
| 学校や教育委員会への報告書作成が毎回大変 | データの再利用ができていない状態 |
1つでも当てはまるなら、現状の運用がいつ破綻してもおかしくない状態です。
専用ツールで解決できること
ICT支援員のスケジュール管理に特化したツールを使うと、カレンダーの限界が一気に解消されます。
- 訪問コマ数の自動集計 ― 学校別・支援員別・期間別の集計が常に最新状態で確認できる
- 均等配分の可視化 ― どの学校への訪問が少ないか、グラフや色分けで一目でわかる
- スワップの記録 ― 入替えの経緯(元の予定・変更後の予定・理由)を残せる
- 複数支援員の一元管理 ― 担当者が全員の稼働状況を1画面で確認できる
- 実績データのエクスポート ― 報告書・請求書作成の下地をそのまま出力できる
これらは「Googleカレンダー(または、Outlook予定表)+Excel等のスプレッドシート+手作業」でつぎはぎしていた機能を、1つのツールでまかなえることを意味します。
まとめ:ツール選びは「今のフェーズ」に合わせて
Googleカレンダー(または、Outlook予定表)は優れたツールです。小規模な運用には十分機能します。しかし、ICT支援員の担当校・人数が増え、均等管理・実績記録・複数人調整が必要になってきたとき、カレンダー単体では機能が足りなくなります。
この記事でお伝えしたポイントをまとめます。
- Googleカレンダー(または、Outlook予定表)は「予定を可視化するツール」であり、「集計・分析するツール」ではない
- 訪問コマ数の集計・偏りの可視化・スワップの記録が、カレンダー単体ではできない
- Excel等のスプレッドシートとの二重管理「つぎはぎ運用」は情報分散・更新工数という新たな問題を生む
- 担当校3校以上・支援員2名以上・月次集計に30分以上かかるなら移行を検討するタイミング
- 専用ツールへの移行で、つぎはぎ運用から脱して管理を一本化できる
「今の運用で何とかなっている」という段階でこそ、次のフェーズに向けた準備を始めるのが得策です。問題が表面化してから動くと、その間にも現場の負担は積み重なっています。
この記事のシリーズについて
この記事は、GIGAスクールICT支援員のスケジュール管理をテーマにした連載の第5回です。
- 記事①:GIGAスクール ICT支援員とは? 仕事内容と派遣の実態
- 記事②:ICT支援員のスケジュール管理、Excelで限界を感じていませんか?
- 記事③:ICT支援員派遣の「見えないコスト」を削減!利益率を高める業務効率化とスケジュール管理術
- 記事④:GIGAスクール ICT支援員 訪問回数 均等化
- 記事⑤:Googleカレンダー ICT支援員 限界(本記事)
この記事は、ICT支援員のスケジュール管理ツール「ZeroSke」の開発・運営をしている橋本博一(DigZero)が執筆しました。ICT支援員・派遣会社の方からのご意見・ご要望はお気軽にお問い合わせください。


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